仕事場にはコーヒーのドリップセットが一式あります。きっかけをくれたのは地元「喫茶フレンド」のマチミおばちゃん。
去年の10月。
僕が帰ってくると母から聞いたようで、「タカヒロ君の顔が見たいけんコーヒーご馳走するからおいで」とお誘いがありました。
母と妹と3人で懐かしい店内に入ると「あらー、タカヒロ君来たね!久しぶりねー、コーヒー作るから座んない、ねぇ、まぁ…」宮崎の田舎から出てきて10年以上経ちますが、たまにしか帰らない自分をこうして迎えてくれる人がいることは、幸せな事ですね。
足の長い椅子に腰掛けると早速僕の祖父母、母の話で盛り上がります。
そんな中、テキパキとコーヒーの準備をするマチミおばちゃん。棚から年季の入ったUCCの大きなスチール缶を手に取り、中から焦げ茶色の豆をすくうと、それをカウンターの端にあるオレンジ色の電動ミル(30年以上使ってる年代物)でガガガガガッと一気に挽いていきます。
そうしてる間に沸いたお湯をカップに少しだけ入れ、挽いた豆をドリッパーにセットし、ゆっくりと丁寧にお湯を注いでいきます。
カウンター越しに話をしながら一連の動作をじっと見ていて、これは純粋な「おもてなし」だと思いました。カップの温度をひとつひとつ確かめる手、お湯を注ぐ時の真剣な表情、会話も忘れません。
淡々と無駄なく丁寧に仕事をこなす喫茶店のマスターは、85歳を越えてもまだまだ現役です。その時の体験が頭から離れず、福岡に戻ってから半ば衝動買いの勢いで揃えました。
仕事の合間に、豆を挽いてペーパードリップでゆっくり休憩する。どんなに時間に追われてる時も、必ずこれで飲むようにしています。